さんま物語

女川のさんま屋の翁が お客様に感謝の気持ちをこめて 魚屋の目線で綴ります。

さんま物語り 7

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 今回はさんまの製造の内容をお話しします。

 

 魚市場で買い入れた秋刀魚を 工場に運んで来ます。

15~6年位前は、秋刀魚船から直接4tトラックにバラ積みされていました。

そして、工場内には、トラック4台分ほど(秋刀魚20t位)入るプールのような大きな水槽(我々は〔タンク〕と呼んでいますが…)が3~4ありました。

 

また、工場内には、直接 海水を汲みあげる井戸のような装置があります。

工場が 海岸近くに立地しているのは、原魚を扱う水が真水ではなく海水が主である事が その大きな理由です。もちろん加工した魚は水道水で処理します。 

 

こうして、海水と氷を入れて、温度を低く保っているその〔タンク〕に トラックからの秋刀魚を投入していました。

 

 

 現在では 海水と氷を入れたプラスチックタンクに 秋刀魚を船から直接タモで入れ、トラックで工場に運び、その後そのポリタンクから選別機に運ぶコンベアーに流し込んでいきます。

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 その選別機は、〔コンピューター選別機〕と云って さんまの重さを2g単位で選別でき、種別は9種類出来ます。

 秋刀魚は柵がある特殊なコンベアーに人の手で一尾づつ並べられます。

秋刀魚が載っているそのコンベアー回転して 選別機の下を通過する時に種別されます。

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 重さで選別された秋刀魚は、海水と氷を入れたタンクに流れ込みそこで保管されます。

 次に、大きさ・重さで決められている各製品を製造する加工室に運び込まれます。

その一部が人間の手で傷、ブチ等を1尾ずつ確かめ、本数と重さを確認し、スチロールに入れられて 皆様にお届けする〔宅配用鮮さんま〕になります。

 

 ここで、「さんま物語り3」で皆様にお話ししたさんまの重さの事をもう一回おさらいしますと…

我々が云うところの45尾サイズ≒165g~170g 脂質≒30 

この秋刀魚はおいしさ抜群、脂ののりも最高。

しかし 重さがあるので1尾あたりの価格が高くスーパーではあまり売れない。

しかし 数が少ないので冷凍しておいて後で売ると思わぬ高値で売れる。

(でも当社は思惑はしないので割は悪いのだが、宅配で全部お得意様に売り切りお客様には大変喜ばれてきました。)

50尾サイズ≒150g~155g 脂質≒25 

このさんまも非常においしく脂ののりも最高、通常このサイズが良心的な会社での宅

配の標準の大きさです。

55尾サイズ≒135g~140g 脂質≒20 

このサイズまでは脂ののりもあり、おいしく食べられます。

不漁の時は 全体的に型が小さくなりますがそんな時の標準サイズです。

 

 この他に60尾・70尾・80尾サイズは さんま丸干し・糠漬け・味りん干しなど 加工品用に冷凍され、後で製品に加工されます。

また50尾、55尾サイズはさんまの獲れない1月~7月までの解凍さんまの販売用として需要があるため、冷凍されたりもします。

また、これ以上小さくなると鮪の餌や養殖魚の餌として冷凍し、販売されます。

 

当社は55尾サイズを生食用刺身、そして 2015全国水産加工品品評会で東京都知事賞・主婦大賞・若者大賞の三賞同時受賞した〔さんま味付けすりみ〕は、中型サイズで製造しております。

 

 

さんま物語り 6

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今回は、秋刀魚の魚市場での買付けのお話です。

 

 朝5時頃、魚市場のサイレンが一回鳴ります。

「今日もさんま船が入港しているぞ」という合図のサイレンです。

 

 朝5時30分位から魚市場の合図で各船の水揚げが始まります。

岸壁に着けた各船から 4tトラック1台に 勢い良くタモに入ったさんまが積み込まれます。

その時それを待っていた我々水産会社の仲買人は、素早くトラックの荷台に乗り込み、2回目のタモから さんまが積み込まれる寸前に 大小の割合を 自分の手 で識別します。

 

船から水揚げされたばかりの秋刀魚は大・中・小が入り混じっています。

 生さんまは、「大」は鮮魚用、宅配用で販売価格が高い品、「中」は加工向けで販売価格が安い、「小」は養殖魚の餌で手間にもならない品です。

 それを 一瞬のうちに識別し、買入価格を決め、入札場へ向かいます。

 

 

 現在はその様にする会社は少なく、入札寸前に積み込まれたトラックの上からただ眺めて 判断し、入札する仲買人が増えて来ました。

昔、私が先輩から〔買いに利あり〕と言われ、『原漁の買入価格に全て利益があるんだ』『原漁をいち早く手で触って、鮮度を確かめる事も大切な事だ』と 教えられたものでした。

 

しかし現在は、バンジョウ(大きな籠)に入れたさんまを 各船が入札場前に持って来て、魚市場職員が その大きさを識別し、それを仲買人が見て買入価格を決め、入札する様になりました。かつて、私が教えられた事がウソのようです。

 

けれども、船一艘全部の秋刀魚を そんな籠一つで価格を決めるのは大変な事です。

ですから、やはり自分の目で原魚を見極めたいと考える会社は 朝早く市場に来て、前記した様にトラックに乗り込んで買入価格を決めております。

 

 

 7時に各船ごとのサンプルを見た仲買人の入札が始まります。

魚市場のサイレンが2回鳴ります。「これが入札を始めるぞ」という合図です。

 

 籠一つで判断しての入札は、後で様々な問題を起こすことがあります。

魚は、特に秋刀魚は、満船になる数量が 海中で同じ大中小の割合で群れを成している訳が無く、漁獲されたさんまも1艘の 魚倉全部が同じ大きさの秋刀魚である筈が ありません。

だから、1艘分の秋刀魚が水揚げされた時トラック2台目になると 魚の大きさが違ってくる事がままあります。

こんな時、仲買人が〔チャン〕と云ってクレームを付けます。

 

 〔チャン〕がついた時は、仲買人と魚市場と〔やど〕と呼ばれる 船主の代行を務める廻船問屋とが話し合い、価格を決めます。

それで折り合わない時は再入札を行ないます。しかし、これはお互いに感情を害するのであまりしません。

互いの信頼関係に重きをおく、昔からの女川魚市場の流儀です。

 

鮮度の悪い魚は買わない。その代わり鮮度のよい秋刀魚を運んで来たら、高値がついても買う。こうした信頼関係を築きながら、優秀船が女川港に集まるようになってきたのです。

 

 もちろん我々も 前日に明日の入港船数と水揚数量は確認し、『戦い』に備えます。

加えて、魚市場の首脳陣は 明日の隻数と数量を把握します。(不漁の場合はこのかぎりではありませんが)

「この数量では業者全員の買付数量には足りない」と判断したら、他港に入港しようとしている僚船に女川入港をお願いする、また、多い時は 値崩れを避けるため 他港に回航してもらうなど、いろいろな作戦をたてて 明日に備えているのです。

 

 

 次回は、工場内でのさんまの製造の仕方をお話ししましょう。

                                                              文責:ワイケイ水産㈱ 会長 木村 喜一 

 

さんま物語り 5

   人生いろいろ、秋刀魚もいろいろ。

さんまにも いろいろな〔もの〕があると言う事を知って下さい。

 

 さんま漁は「大漁」の年「不漁」の年があり、大漁の時は一日の漁で満船になり 帰港し水揚げします。 

昨シーズンは、韓国・台湾そして中国等の公海上での乱獲、海水温が高いなどが重なって不漁の年になってしまいました。

 

 漁が少ない時は満船にするのに1~2日かかります。

すると 最初に獲れたさんまと翌日獲れたさんまではどうしても鮮度にバラつきが出来ます。良品と次品です。勿論ですが入札値段も大きく違ってきます。

つまり外観が同じように見えても さんまにも一級品と二級品があると言う事です。

 

「さんま物語り 2」でもお話しましたが,『漁獲方法』の違いと『漁獲時の処理の仕方』の違いで鮮度が大きく違い、入札価格にも影響してきます。

女川には、この『漁獲時の処理の仕方』の上手い優秀船が多く入港します。

(さんま物語り2に詳しく書いてありますので、どうぞ・・・)

 

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 次に、ここ三陸に住む人々にとっては、秋刀魚を送りご馳走したいなぁとお中元と同じように 日ごろの感謝のしるし・恩返しの贈答の機会でもあります。

さんまシーズンが始まると 「初物を」と出来るだけ早く友人・知人に食べさせたい一心で 「早く送って」とたくさんのお客様からご注文を いただきます。

 

しかし さんま物語1でお話ししましたがさんま漁は北海道から始まって次第に南下してくる回遊魚です。

三陸の各漁港や ここ女川港初水揚げは、北海道で初水揚げされるよりも1週間ぐらい(最近は もう少しかかるか)遅れます。

ですから 三陸で初水揚げの時は、北海道はすでに水揚げが始まっており、その北海道産のさんまは スーパーに並んでおります。

 

 内地の業者も「早く」と言われると(そんな事は無いとは思いますが)北海道から買付することは可能です。

もし、北海道で水揚げされたさんまを1日かけてトラックで陸送し翌日到着後、自社工場で選別して宅配便で皆様にお届けするとした場合、鮮度等には大きな違いが出てくると思います。

 

 ところが地元の漁港つまり私どもなら女川港で水揚げされれば、その数時間には 選別し 箱詰めし 積送します。

そして、翌日には日本全国に配達されます。(中国地方、九州、沖縄は翌々日)。

ですから、水揚げは遅くなりますが 鮮度は抜群で美味しさが違います。

 

また、8月中に水揚げされる秋刀魚の「初物」は 脂が少なくお寿司のネタ、刺身にはいいのですが塩焼きでは少し物足りなさを感じると私は思います。そして型が小さければ別ですが値段が高いです。

 

 この様に秋刀魚にもいろいろあります。

ぜひ、信頼出来る店を見つけて、『秋刀魚の味も こんなに違うのかなぁ、ああ おいしい』と、味わって下さい。

                                                             文責:ワイケイ水産㈱ 会長 木村 喜一 

 

yk-suisan.hatenablog.com

 

 

 

さんま物語 4

早や8月、さんまの季節がやって来ました。今回はさんま漁獲の規制についてお話をして見たいと思います。 

 

現在さんま漁獲国は台湾、韓国、中国、日本が主です。 

世界の海は他国が入れない自国の領海内と誰でも自由に漁獲出来る公海とに分かれております。

 

現在公海でのさんま漁は、日本の我々が10年前から叫んでいた資源保護のための操業規制について、ようやくアメリカ合衆国を初めとした7ヵ国によって話し合いが行われております。

昨今 テレビのニュース等でご存知のように台湾船が公海で漁獲を始めております。

 

日本でも水産庁が 5月から調査船でさんまの状況を調べております。 

それによりますと5月頃は例年ぐらいの数量だったのが、6~7月に入ってからは台風の影響もあって数も少なく、小型魚が多く見られたそうです。 

 

今年の日本のさんま漁の刺し網漁は もう始まっており、漁獲は低調、そのためか釧路魚市場では大型魚1匹2千円もしたそうです。

棒受け漁 の10t 未満船は8月1日、20t未満船は8月10日から、大型船は8月15日からです。

 

皆様もよくご存知の様に、さんまは8月~9月頃まではロシア海域で 餌を食べ大きくなっている最中です。

そこで日本はロシアにお金を支払い、お願いをして その期間ロシア領海内で漁獲をしている訳ですが、現在日本とロシアの関係は政治的にあまり良いとは言えず、ロシア領海で漁獲する鮭鱒が今年は例年の30%、来年は0ですよ と通告されました。

 

さんまもご多分にもれず大型船548t、中型船203t、小型船186tと 昨年の約半分ぐらいの数量に規制されました。

 

さらに懸念されるのは、ロシア海域で漁獲した魚を日本に持ち帰る時にロシア海域と日本海域との境界線にロシアのチェックポイントがあり、そこで検疫を受ける訳ですが、それが相当厳しくなる様だとの情報です。

 それに加えて、今年の日本国内での漁獲規制が昨年の 35万tから26万tと9万tも減になりました。

 

 今年のさんまをとりまくの状況は、このように非常に厳しい見方になっておりまが、私どもがこの度の大震災の時の教訓 

   “不安を自分で勝手にふくらませない。やってみないとわからないよ” 

の精神で、いつもどおり お客様皆様方に安心・安全・最高の鮮度のさんまを出来る限り安くお届けしたいと思っております。

 

                       文責:ワイケイ水産㈱ 会長 木村 喜一 

 

さんま物語  3

 

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今回は私の独り言を聞いてください。

 

一口に「鮮さんま」といっても各商店の積送品には、大きさ、鮮度、おいしさにかなりの差があります。

 

 先ずは大きさです。

専門的に言いますと45尾サイズ(165g~170g脂質≒30)、50尾サイズ(150g脂質≒25)、55尾サイズ(135g~140g脂質≒20)が宅配のさんまになります。

45尾サイズは、シーズンの漁獲に左右されるため 各卸売市場では1尾当たりの値段が高くなるのであまり売れません。

漁獲量として安定していることもあり どうしても1尾あたりの値段が比較的安価になる50尾、55尾に売りが集中します。一部の商店はこの45尾を冷凍品にして高くなるのを待って販売する場合も かつて あったようです。

 

 次に鮮度です。

さんま物語り②でもお話ししましたが 一番は船内の鮮度保持です。

漁獲したさんまを船倉に入れる時の海水・真水・氷の割合を魚に最適にする技術を持っている漁船かどうかでそれは決まります。

次に、船側 とすれば 漁獲数量を第一に考えますので、『少し鮮度が落ちても船倉一杯に詰め込む船』か、『鮮度を重視し余裕を持って魚倉に詰め込む船』で違ってきます。

鮮度の良い魚は高く売れる、それを見極める仲買人が多い女川がどうしても良い魚を持った漁船がが多く入って来ます。

それと 沖ではいつも大漁とは限りません。漁の悪い日は船倉の半分、翌日に半分で満船になり帰航し水揚げする時もあります。

一日早く漁獲したさんまと次の日に漁獲したさんまは通常は鮮度が違ってきます。

ですから1号品と2号品に分けられ値段に差がつき入札されます。鮮度の違いはプロが見るとはっきり分かるのですが一般の方はもしかして分からなiくらいの鮮度の場合もあります。しかし鮮度が少しでも劣るとお客様の手元に届いたとき、内臓が溶け出す品もあっておいしさが落ちます。

 

 そして、美味しさです。

前にもお話ししましたがさんまは6月頃痩せた体で女川沖を北上し、7月には千島列島付近でたくさん餌を食べ大きく太く美味しくなって行きます。

しかし漁場は分散しており一足遅く北上したさんまはまだ痩せておりそれらが入り混じって漁場が形成され漁獲されるのも8月初旬から中旬にかけてのさんまです。

北海道周辺の漁場は目の前ですから鮮度は抜群です。

しかし餌を食べ始まったさんまは内臓に餌を残しており それを身と一緒に食べる通の方にはお刺身はまずまずですが焼き魚にして食べる味はイマイチかな…と思います。

 

 さんまにはこの様にいろいろあります。青魚のさんまは「されど秋刀魚」なので、ぜひ良い店を、良い時期を見つけて買って下さい。

 

                       文責:ワイケイ水産㈱ 会長 木村 喜一

 

※2014年秋 販促のおたよりとしてお客様へ作成したものです。

 

 

 

さんま物語 2

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もう8月、さんま漁、北海道ではもう始まっております。 

さんまは現在北海道沖で 痩せた体を一人前にしようと一生懸命に豊富な餌を食べながら千島列島を目指し北上をしている頃でしょう。

 

第2回 漁獲方法の違い

魚の取る方法は時期によって違います。

前回にお話ししましたが一番最初の漁は7月から始まる北海道東での刺し網漁です。

さんまの大きさの目の網をカーテンの様に海中に立て魚が網の目に引っかかるのを待つ方法です。

 

10時間ぐらい海中に投入したままなので、入れた時に引っかかった魚と 網を引き上げる直前に引っかかった魚では鮮度にばらつきがが出るのは当然です。

しかし初物ですから値段も高く、漁が少ない時は浜値で1匹1000円以上の値が付きます。船は小型で乗組み員は2~3人、夫婦で助け合って操業しているのが多いです。

鮮度は今一ですが なんかあったかい、特別な味がするかも知れません。

 

 そして8月初旬になり 乗組員が5~6人の小型船、中旬には中型船、下旬には大型船が解禁となり本格的なさんまシーズンに突入する訳です。

 

この船舶の漁法はいずれも 棒受け網漁 と言います。

これはさんまが光に反応する習性を利用して漁獲する方法です。

 

昼間 漁群探知機でさんまのいる場所を あらかじめ掴んでいて、夜になると船を群れの近くに移動させ、両側の舷側の大きく太い棒の様な竹棹に付いている電球を一斉につけ煌々と海面を明るく照らし魚をおびき寄せます。

しばらくして片方の舷側の電気を消します。

魚は電気の付いている舷側の方に集まって来ます。

その時に電気を消した別の舷側の方に静かに網を入れます。

電気が付いている舷側に魚が多く集まったその時 急に電気を消し、網の入れてある舷側の方に電気を付けます。

すると魚は船底を潜り抜けて網のある舷側になだれ込むように回り込んで網に入って来ます。

網にいっぱい入ったのを確かめて網をたぐり寄せます。

その網の中に水中ポンプを入れ、大きなホースで海水と一緒に魚を船倉に流し込みますが、その時 海水は直前に海中に放失され 魚だけが入って来ます。

 船倉には最初から海水・真水・氷と混じり合った水があって、魚はその中に入って行きます。

この時の船倉の海水・真水・氷の割合が、水揚げするまでの鮮度の保持に微妙な関係をもたらし、それは各船の企業秘密になっております。これを担当する人を魚漁長と言って 上手な魚漁長は他の船員よりもかなりの歩合(給料)を貰っている...と言う事です。

 

実は、その鮮度保持の上手な船が多く女川に入港します。

ですから 値段も他港に比べると高く、高いから 鮮度保持の上手な船は 競って女川に入港し、鮮度に自信のない船は 女川を敬遠する と云う好循環を生み出しています。

こうしたことを背景に、女川のさんまは鮮度が良いと 自信を持って言えますし、いわば業界の常識になっております。                 

 

                                                                              文責:ワイケイ水産㈱ 会長 木村 喜一

 

※2014年夏に お客様宛ダイレクトメール用に作成したものです。 

さんま物語 1

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さんま物語 

1. 

昨今、さんま漁の最盛期が遅くなってきました。

それは 地球の温暖化により海水温が高くなってきた為、北からの親潮(寒流)の勢力が弱く、寒流に乗ってくるさんまが ソ連海域から南下が遅れてしまうからです。

そこで ふと気が付きました。

お客様に さんまについて いろいろとお知らせすべきではないかと・・・。そこで書き始めました。どうかお読みください。

 

第1回 さんまの旬

 さんまは、回遊魚と言って日本列島近海を一年かけて北から南まで、南から北まで移動します。

 夏場は千島列島(ソ連海域)の沖合から寒流(12℃~17℃が適温)に乗って南下を始めます。

 プランクトン・沖アミ等の餌を食べながら、8月には道東沖、9月から10月にかけて三陸沖、月常磐沖、12月銚子沖、冬場は列島沿いを南下し、九州まで回遊します。 

その後 産卵のため北上を始め、5月~6月頃三陸沖を通過し 7月頃北海道沿岸、そして千島列島に戻ります。

そしてまた、南下を始めます。(1年で成魚になり寿命は2年です。)

 

 温かかった南の海域で脂がなくなって痩せていたさんまは、北上後 7月頃より 千島列島(ソ連海域) から 豊富な餌をたくさん食べながら、脂肪分を取り込み 少しずつ太りながら南下を始めます。

 漁は、一番早く7月初旬 北海道道東沖で 刺網漁が始まります。

この漁は 10時間ぐらい網を海中に入れて置いて、網に掛かった魚を獲る漁法の為、鮮度がいまひとつ劣る場合があります。

それと季節が早く、脂がよくのってない等がありますが、“走り”のさんまですので値段も高く、都会で季節の先取りとして お寿司の具や高級食材として出まわるのが大半です。

 8月に入りますと、 順次 小型漁船 中型漁船 の解禁と共に、シベリア海域から北海道沖に南下したさんまが 漁獲され、いちばん近い漁港 北海道に水揚げされますが、本来ですと この時期 脂ののりは本当ではありません。

8月下旬には大型漁船が解禁となり、さんまは一般市場にも出回り始めます。価格はいくらか安くなりますが、まだまだ高く張り付いており、「もうちょい」と言う感じです。

それが 9月になると漁も本格的になり 価格も安く、しかも脂も充分に乗った魚が 多くなって来ます。

ですから我々秋刀魚屋に言わせれば、おいしくなるのは9月に入ってからだと思います。

 しかし、お客様には『初物は早く』とのご希望もおありでしょうから、その辺が我々にとっては脂の乗りがなあ・・・と 痛し痒しです。

 

                   文責:ワイケイ水産㈱ 会長