さんま物語

女川のさんま屋の翁が お客様に感謝の気持ちをこめて 魚屋の目線で綴ります。

さんま物語 1

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さんま物語 

1. 

昨今、さんま漁の最盛期が遅くなってきました。

それは 地球の温暖化により海水温が高くなってきた為、北からの親潮(寒流)の勢力が弱く、寒流に乗ってくるさんまが ソ連海域から南下が遅れてしまうからです。

そこで ふと気が付きました。

お客様に さんまについて いろいろとお知らせすべきではないかと・・・。そこで書き始めました。どうかお読みください。

 

第1回 さんまの旬

 さんまは、回遊魚と言って日本列島近海を一年かけて北から南まで、南から北まで移動します。

 夏場は千島列島(ソ連海域)の沖合から寒流(12℃~17℃が適温)に乗って南下を始めます。

 プランクトン・沖アミ等の餌を食べながら、8月には道東沖、9月から10月にかけて三陸沖、月常磐沖、12月銚子沖、冬場は列島沿いを南下し、九州まで回遊します。 

その後 産卵のため北上を始め、5月~6月頃三陸沖を通過し 7月頃北海道沿岸、そして千島列島に戻ります。

そしてまた、南下を始めます。(1年で成魚になり寿命は2年です。)

 

 温かかった南の海域で脂がなくなって痩せていたさんまは、北上後 7月頃より 千島列島(ソ連海域) から 豊富な餌をたくさん食べながら、脂肪分を取り込み 少しずつ太りながら南下を始めます。

 漁は、一番早く7月初旬 北海道道東沖で 刺網漁が始まります。

この漁は 10時間ぐらい網を海中に入れて置いて、網に掛かった魚を獲る漁法の為、鮮度がいまひとつ劣る場合があります。

それと季節が早く、脂がよくのってない等がありますが、“走り”のさんまですので値段も高く、都会で季節の先取りとして お寿司の具や高級食材として出まわるのが大半です。

 8月に入りますと、 順次 小型漁船 中型漁船 の解禁と共に、シベリア海域から北海道沖に南下したさんまが 漁獲され、いちばん近い漁港 北海道に水揚げされますが、本来ですと この時期 脂ののりは本当ではありません。

8月下旬には大型漁船が解禁となり、さんまは一般市場にも出回り始めます。価格はいくらか安くなりますが、まだまだ高く張り付いており、「もうちょい」と言う感じです。

それが 9月になると漁も本格的になり 価格も安く、しかも脂も充分に乗った魚が 多くなって来ます。

ですから我々秋刀魚屋に言わせれば、おいしくなるのは9月に入ってからだと思います。

 しかし、お客様には『初物は早く』とのご希望もおありでしょうから、その辺が我々にとっては脂の乗りがなあ・・・と 痛し痒しです。

 

                   文責:ワイケイ水産㈱ 会長